3行まとめ
- キーを打つ前から、VS CodeとCopilotは通信を始めていた
- 起動時のリクエストは認証やモデル一覧など6種類に分かれる
- 会話は手元のSQLiteに平文で貯まり、モデルが検索できる
何が起きたか
あるエンジニアが、自分のVS CodeとCopilotの通信を1件ずつ観察しました。きっかけは、Copilotのクレジットが月を追うごとに早く尽きたことです。使ったのは mitmproxyアプリとサーバーの間に割り込む中継ソフト。暗号化された通信を復号して中身を見せます。 という中継ソフトです。
一番の発見は、開いた直後にありました。まだ何も入力していないのに、GitHubとCopilot宛てのリクエストが次々に出ていきます。筆者はそれを6種類に整理しました。
認証とセッション、設定とポリシー、MCPレジストリ、リポジトリとセッションの文脈、モデル探索、最近開いたリポジトリ。
対象は自分の端末で自分が使っているアプリです。他人の端末に同じ仕掛けを置けば、話はまったく変わります。
なぜ難しい・何がすごいか
起動直後の通信は、準備運動というより身元照会です。
最初に走るのは認証です。OAuthトークンを受け渡して権限を確認する認証の流れ。Copilotは起動時にこれを走らせます。のトークンを取り、短命のトークンに交換し、そのアカウントで何が使えるかを確かめます。ここまでが、キーを1つも打たないうちの出来事です。
次がモデル探索です。/models で利用できるモデルの一覧を取り、続いて /agents/swe/models に問い合わせます。後者はソフトウェア開発のエージェント機能で使えるモデルを絞るためのものです。
入力を始めてからも、答えが返る前にもう1往復あります。Autoモードでは、送ったメッセージがまず /models/session/intent に渡されます。
そこで code-gen・debugging・reasoning・tool-use といった意図に採点されます。その結果で担当モデルが決まります。
たとえ話
自宅の玄関に小さな郵便局を置いたと思ってください。出す手紙はすべてその窓口を通ります。局員は封を開けて中身を読み、控えを取り、あらためて封をして送り出します。
成り立つのは、自分の家の自分の手紙だからです。よその郵便受けに手を伸ばせば、それは別の話になります。
用語ミニ辞典
- mitmproxy: アプリとサーバーの間に割り込む中継ソフト。暗号化された通信を復号して中身を見せます。
- Electron: Node.js と Chromium を同梱してデスクトップアプリを作る枠組み。1つのコードで複数のOSに配れます。
- extension host: VS Codeが拡張機能を動かす、UIとは別のプロセス群です。
- OAuth: トークンを受け渡して権限を確認する認証の流れ。Copilotは起動時にこれを走らせます。
- Chronicle: 手元のSQLiteに作業の履歴を残すCopilotの機能です。
技術者向けの深掘り
引っかかるのは、ElectronNode.js と Chromium を同梱してデスクトップアプリを作る枠組み。1つのコードで複数のOSに配れます。アプリの通信経路が2本あることです。Chromiumのネットワークスタックを使う道と、Nodeの http・https・fetch を使う道があります。どちらを通るかで、プロキシ設定が効くかどうかが変わります。
VS Codeはさらに分かれています。UIとIDE機能と拡張機能が別のプロセス群に切られ、Copilotは extension hostVS Codeが拡張機能を動かす、UIとは別のプロセス群です。 側で動きます。設定を拡張にも及ぼさないと、肝心の通信は素通りします。
暗号はこう開きます。mitmproxy が自前の認証局を立て、端末にそれを信頼させる。1本だったTLSが、アプリとプロキシの間、プロキシとサーバーの間の2本に割れます。
裏取りはコードでも取れました。Chronicle手元のSQLiteに作業の履歴を残すCopilotの機能です。のセッション保存は sessionStore.ts にあります。user_message と assistant_response は平文の列でした。
書き込み側にも、伏せ字にする処理はありません。
これは自分に関係ある?
送られるのは、打った文字だけではありません。
筆者は .env に偽の秘密を書き、無関係な pyproject.toml で入力しました。すると、その .env の行を含む補完リクエストが飛びました。直近の編集を運ぶ既定の窓が、最大20ファイル・8件の編集要約・変更の前後3行を拾うためです。
.env 側でCopilotを切っても効きません。リクエストを起こしたのは別のファイルだからです。
個人プランには .env を特別扱いする既定がなく、.gitignore との連動もありません。除外の仕組みはありますが、Business/Enterprise の管理者が決めるリポジトリポリシーに紐づきます。
会話そのものも手元に残ります。Chronicleは session-store.db にプロンプトと応答、セッション要約を貯めます。モデルはSQLでそこを引き、過去の会話を持ち出します。
筆者の結論は、危ないという警告ではありませんでした。AIコーディングツールが状態を持つシステムに変わり、コンテキストの組み立て方そのものが製品になりつつある。
どこまで集め、どこに置き、どこへ渡すか。その線引きが差になります。
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