3行まとめ
- OpenAI は内部モデルが未解決の数学問題を100問以上解いたと発表しました。
- 数学者9人が独立した助言グループを作り、結果の扱いに口を出します。
- グループは無報酬で、OpenAI に反対する助言も公開できます。
何が起きたか
OpenAI は数学の独立助言グループと組むと発表しました。同社は8月28日に新しい内部モデルの訓練を始めています。このモデルはナビエ・ストークス方程式水や空気の流れ方を表す方程式です。用語集でこの語を見るのミレニアム懸賞問題数学の重要な未解決問題として選ばれた問題群です。ナビエ・ストークス方程式に関する問題もその1つに入っています。用語集でこの語を見るを解きました。
さらに数学のほとんどの分野で、100問以上の長年の未解決問題を解いたと OpenAI は書いています。社内の数学者もこの進み方に驚いた、と同社は続けます。数学は基礎科学であり、新しい発見は幅広い応用につながるとも説明しています。
助言グループのメンバーは9人です。ティモシー・ガワーズ(コレージュ・ド・フランス、ケンブリッジ)とエドワード・ウィッテン(IAS)が入っています。
マーティン・ヘアラー(EPFL)、ラヴィ・ヴァキル(スタンフォード)も参加します。グループは OpenAI から独立して動きます。
なぜ難しい・何がすごいか
OpenAI は助言グループに1つだけ権限を渡していません。社内の数学研究をどの速さで進めるかについて、グループは助言する役割を負わないと同社は明記しています。速度は OpenAI が決めます。
グループが受け持つのは、出てきた結果をどう扱うかです。結果の重要性を評価し、公表の足並みをどう揃えるかを助言し、数学研究の基準について意見を述べます。モデルが数学の研究と学習をどう支えられるかも助言の範囲に入ります。
OpenAI は数学関連の AI 能力をより広く展開する方法を検討中だと書いています。今回の協業は第一歩だと同社は位置づけています。
OpenAI は公表の仕方を外部に相談し、開発の速さは自分で決めます。
用語ミニ辞典
- ミレニアム懸賞問題: 数学の重要な未解決問題として選ばれた問題群です。ナビエ・ストークス方程式に関する問題もその1つに入っています。
- ナビエ・ストークス方程式: 水や空気の流れ方を表す方程式です。
- 未解決問題(open problem): 答えがまだ証明されていない数学の問題です。解けた時点で未解決ではなくなります。
- 負の外部性(negative externalities): ある行動が、その当事者以外に及ぼす悪い影響のことです。公開書簡はこの語で AI の数学利用を批判しました。
技術者向けの深掘り
今回の発表は、数学者側からの批判に応える形を取っています。公開書簡「A Severe Misalignment of AI in Mathematics」が出ました。
数学者たちは、未解決問題を解くことを新しい AI システムのベンチマークに使う点を批判しました。当事者以外に及ぶ負の外部性を問題にしています。この批判は AI 企業が数学コミュニティと丁寧に関わる必要を示している、と OpenAI は書いています。
グループの独立性は、運用の条件で担保されています。メンバーは OpenAI から報酬を受け取りません。メンバーの入れ替えはグループ自身が決めます。
頼まれていない助言を出すことも、OpenAI が数学に与える影響を論評することも、助言を公開することもできます。
グループの価値は、メンバーが自分の判断を働かせ、私たちの判断に異を唱えられるかどうかにかかっています。
と OpenAI は述べています。
これは自分に関係ある?
数学に縁のない読者にとっては、AI が研究者の仕事に踏み込んだときに何が起きるかの実例になります。未解決問題が解かれる側の数学者は、公開書簡で懸念を表明しました。
エンジニアにとっては、モデルの評価軸の置き方が争点です。未解決問題を解けたかどうかをベンチマークにすると、その問題を研究していた人の仕事に影響が及びます。
研究に関わる人にとっては、成果の検証と発表の順序を誰が決めるのかが実務に効きます。助言グループは公表の足並みと研究の基準の両方に意見を出します。
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