3行まとめ
- Sonyら音楽出版社3社が、Anthropicと創業者2人を著作権侵害で提訴しました
- 原告は社内チャットの文言と、書籍作家の訴訟で開示された文書を証拠に挙げています
- Anthropicは「訴訟の焼き直しで、学習はフェアユース許可を取らずに著作物を使っても侵害にならない場合を定めた米国の規定です。用語集でこの語を見るだ」と反論しています
何が起きたか
Sony・EMI・Warner Chappell の3社が、Anthropic を著作権侵害で提訴しました。被告は会社だけではありません。訴状は CEO の Dario Amodei と共同創業者の Benjamin Mann も個人で挙げています。
訴状によれば、Anthropic は2021年7月にファイル共有ソフト BitTorrent利用者どうしがファイルの断片を配り合うファイル共有の仕組みです。断片を送り合う行為を「トレント」と呼びます。用語集でこの語を見る で書籍を集めました。取得先は海賊版図書館 LibGen で、数百万冊に及びました。原告が権利を持つ楽曲の譜面と歌詞も「何千何万と」含まれていた、と訴状は述べています。
訴状は社内チャットも引用しています。LibGen の複製を置いた Pirate Library Mirror が公開された直後のやり取りです。Mann は同僚に「ちょうどいいタイミングだ」と書きました。
別の社員が「zlibrary my beloved」と返しました。原告はこのやり取りを、Anthropic が海賊行為を称賛していた証拠だと位置づけています。
なぜ難しい・何がすごいか
この訴訟では、裁判所が認めた事実と原告の主張が同じ紙面に並びます。決着している部分はわずかです。
Anthropic は書籍作家との訴訟で、700万冊を超える書籍を海賊版で入手したと認めました。そのうえで15億ドルを払って和解しています。Bartz 事件の裁判所は、生成AIの学習を変形的なフェアユースだと判断しました。
フェアユースは、許可を取らずに著作物を使っても侵害にならない場合を定めた米国の規定です。Bartz 事件の判断は、作家側が市場を奪われたと証明できなかったことに支えられていました。音楽出版社は、歌詞なら証明できると見ています。
AIが作った曲がチャート上位で作詞家と競合している、というのが原告の根拠です。
原告は15億ドルの和解額にも不満を述べています。2兆ドルの評価額を手にした会社の侵害を止める額ではない、というのが言い分です。
用語ミニ辞典
- BitTorrent: 利用者どうしがファイルの断片を配り合うファイル共有の仕組みです。断片を送り合う行為を「トレント」と呼びます。
- LibGen・Z-Library・PiLiMi: 権利者の許可なく書籍を集めたサイトです。LibGen は2021年末に FBI が閉鎖し、その中身を写して Z-Library が、さらにその複製として Pirate Library Mirror が作られました。
- フェアユース: 許可を取らずに著作物を使っても侵害にならない場合を定めた米国の規定です。
- 市場被害: 権利者が、その著作物の市場で売上や機会を失うことです。フェアユースの判断で重く見られます。
- 合成データ: 別のAIモデルが作り出した学習用のデータです。
技術者向けの深掘り
音楽出版社は、商用 Claude と海賊版データの間に一段はさまれた経路があると主張しています。訴状が描く経路は2本です。
- 合成データ別のAIモデルが作り出した学習用のデータです。用語集でこの語を見る経由: LibGen や PiLiMi 由来のテキストで学習した非商用モデルが合成データを作り、そのデータで商用 Claude を少なくとも1つ学習させた
- フィードバック経由: 非商用モデルが、商用 Claude の少なくとも1つにフィードバックを与えた
Anthropic はこの経路を否定しています。LibGen と PiLiMi から取得した書籍を商用 Claude の学習に使ったことはない、という主張です。原告は否定を訴状に載せたうえで、成り立つかどうかは「学習」の定義次第だと述べています。
書籍作家の訴訟で開示された文書には、別の使い道が出てきます。Anthropic の証人は、LibGen での LLM(大規模言語モデル)の学習をやめたと証言しました。そのうえで、出力の長い文字列が原文と一致しないかを調べる用途でデータセットを使い続けた、とも述べました。
音楽出版社は、裁判所にさらなる開示も求めています。学習データ・学習方法・モデルの既知の能力を報告するよう Anthropic に命じてほしい、という要求です。
これは自分に関係ある?
- 歌詞や曲を作る人: 訴状は、Claude が歌詞を丸ごと出力し、本物の歌詞とAIが作った歌詞を混ぜると述べています。判決はまだ出ていません。
- AIを業務で使うエンジニア: 争点は学習データの出どころです。音楽出版社は、Anthropic が権利者に許諾を求めなかったと述べ、他の大手AI企業との違いを挙げています。
- Claude を使う人: 原告は、コード進行を尋ねただけで歌詞が付いてくると訴状に書いています。Anthropic は変形的なフェアユースだと反論しており、判断は裁判所に委ねられています。
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