3行まとめ
- テレビ朝日が、映像の全編をAIで生成したCMを制作しました。同局初です
- 題材はサントリーの飲料「GREEN DA・KA・RA」。親子での外出や運動、部活動などの場面を描いた30秒の作品です
- 制作したのは2025年4月発足の社内組織「AIクリエイティブスタジオ」で、今後も生成AIを使ったCM制作に挑戦するとしています
何が起きたか
線引きがはっきりしています。映像は全編AI生成、テロップと音声は従来どおりの制作です。つまり「画作り」をAIが担い、情報の正確さや聞き取りやすさに直結する部分は人が仕上げました。
体制面では、テレビ朝日が2025年4月に立ち上げたAIクリエイティブスタジオが制作を担当。同局は2025年10月にAIポリシーを制定しており、テレビ朝日ホールディングスの新経営計画「START UP テレ朝!!」でもAI活用が重点戦略に位置づけられています。単発の実験というより、路線としてのAI制作です。
なぜ難しい・何がすごいか
「AIでCMを作った」というニュースは以前からあります。今回の意味は、作り手がテレビ局の社内組織で、流すのが実際のクライアント(サントリー)のCMだという点にあります。
技術デモと商業放送の間には壁があります。放送されるCMは、クライアントの商品イメージと放送基準という二重の審査をくぐる必要があり、「面白い実験」では通りません。その壁を、局の正規の制作ラインが越えたことになります。一方で、使用したAIツールや工程の詳細は公表されていません。「どこまで楽になったのか」はまだ外からは見えない段階です。
テロップと音声を人が作った線引きも示唆的です。生成AIの映像は「雰囲気」を作るのが得意で、文字や商品名の正確な表示は不得意という特性が、そのまま分業に表れています。
用語ミニ辞典
- 全編AI生成: 映像素材のすべてを生成AIで作ること。実写撮影やCG制作を置き換える
- AIクリエイティブスタジオ: テレビ朝日が2025年4月に設けたAI制作の社内組織
- AIポリシー: AI利用の社内ルール。同局は2025年10月に制定済み
技術者向けの深掘り
公開情報が薄いため、確かなことは体制と分業の設計だけです。それでも読み取れる点はあります。第一に、AI映像の弱点(文字の破綻・音声の不自然さ)を人の工程で補完するハイブリッド構成を、放送品質の実制作で採用したこと。第二に、ポリシー制定(2025年10月)から実放送(2026年8月発表)まで約10カ月という、大企業としては速い展開です。
工程・ツール・コスト・制作日数が公開されれば、広告制作の原価構造の変化を測る貴重なデータになります。続報待ちの領域です。
これは自分に関係ある?
- 広告・制作業界の人: 発注側と制作側の力関係が動く前触れです。「実写撮影が前提」の見積もりは、比較対象としてAI生成案が並ぶ時代に入ります
- マーケティング担当: CM制作のコスト構造が変われば、これまでテレビCMに手が届かなかった予算規模でも選択肢に入ってくる可能性があります
- 視聴者: 「これAIかも」と気づかないCMが増えていきます。今回のような公表付きの事例は、見分ける目を養う教材としても価値があります