3行まとめ
- Steamの2024年リリースで独自エンジンは約13%。2012年は71%でした
- ところが販売本数で見ると、その独自エンジン勢が43%を占めます
- 2022年に有料エンジンが突然終了し、利用者はコードの全削除を求められました
何が起きたか
ゲームエンジンを自分で作る開発者は、割合では激減しました。2024年にSteamで出たゲームのうち、独自エンジンは約13%。2012年は71%でした。
数字はVideo Game Insightsの集計です。既製エンジンが行き渡った12年でした。それでも自作は消えません。
2024年の販売本数では、独自エンジンのゲームが43%を占めます。多くはAAAタイトルですが、自分で作る選択が商売として成り立つ余地は残っています。
理由として並ぶのは6つです。学習、独立性、低レベルの制御、独自のゲームメカニクス、特化、Modプレイヤーがゲームに加える非公式の拡張。開発側がAPIを用意すると、ゲームはプラットフォームに変わります。対応。このうち独立性は、ここ数年の出来事で重みが変わりました。
なぜ難しい・何がすごいか
ゲームエンジンは、ゲーム本体とOSの間に挟まる土台です。ウィンドウのサイズ変更やキー入力を拾い、物理演算とゲームロジックを回し、GPUへ描画命令を送る。この輪を回し続けるのが第一の役割です。
3Dモデルやアニメーション、音楽の読み込みも引き受けます。ゲームのルールそのものは持ちません。
どこからが自作かは、線引きが要ります。Unityを使いながら社内ツールを大量に作っても、自作エンジンとは呼びません。SDL3ウィンドウ操作や入力、描画のOS差を吸収するライブラリ。自作エンジンでも、この層は既存のものに任せる例が多くあります。とAssimpを組み合わせて3Dゲームを作るなら自作です。
Unrealのレンダラーを書き直した場合も自作には数えません。DX12で描画を手書きし、Windows APIでウィンドウを開けば自作です。
既製品の上に乗るか、土台側を自分で組むか。境目はそこにあります。
たとえ話
飲食店に置き換えると輪郭がはっきりします。既製エンジンは、設備の整った厨房を借りて店を出すやり方です。すぐ開店でき、コンロが壊れれば大家が直します。
自作は厨房から自分で組む道です。開店は遅れます。そのかわり鍋の位置も換気の強さも自分で決められて、大家の都合で追い出されることもありません。
用語ミニ辞典
- ゲームループ: 入力の取得、ゲームロジックの更新、描画を毎フレーム繰り返す処理の輪。エンジンの心臓部です。
- SDL3: ウィンドウ操作や入力、描画のOS差を吸収するライブラリ。自作エンジンでも、この層は既存のものに任せる例が多くあります。
- ランタイム料: ゲームのインストール数に応じてエンジン提供元に払う費用。Unityが2023年9月に発表し、反発を受けて2024年9月に撤回しました。
- ロイヤリティ: 売上の一定割合をエンジン提供元へ払う方式。Unreal Engine 5は生涯売上100万ドルを超えた分に5%かかります。
- Mod: プレイヤーがゲームに加える非公式の拡張。開発側がAPIを用意すると、ゲームはプラットフォームに変わります。
技術者向けの深掘り
第三者のエンジンへの依存は、技術・法務・財務の3つに分かれます。
技術面では、バグや不足機能に当たると提供元の修正を待つしかない場面が出ます。オープンソースなら自分で読んで直せます。
UnityがVulkanとDX12へ移った際も、描画層は古いモデルのエミュレーションを抱えました。互換を壊せないので、性能の上限が残ります。
法務面はもっと直接的です。エンジンは買い切りの所有物ではなく、取り消されうる利用許諾です。
Unityではライセンスが失効した報告が続いています。2019年のImprobable、2023年8月、2024年3月、2026年7月。
有料エンジンThe Machineryは2021年7月、年50ドルで始まりました。2022年8月、利用者は開発終了とソースやバイナリの全削除を通知されます。
レベルもコードもエンジンに密結合していれば、作ったものの価値はほぼゼロに落ちる。Ryan Fleuryはそう書いています。
財務面には数字があります。2026年8月時点で、Unity Personalは直近12か月の売上や調達が20万ドルまで無料。超えると1席あたり年2,310ドルのProが要ります。
GodotはMITライセンスで無料です。自作なら、この費用は消えます。
自分のエンジンを作れば時間とお金を節約できると思いがちですが、そうなることはまれです。
Maxim Kiselevはこう述べています。
これは自分に関係ある?
ゲームを作る人には、判断材料が増えました。既製エンジンの学習コストと、自作の時間コスト。どちらもゼロにはなりません。
Noitaの落下シミュレーションやTeardownの破壊表現は、既製品では実現しにくい仕組みでした。そういう技術が企画の中心にあるかどうかが分かれ目です。
ゲーム以外のエンジニアにも同じ構図があります。基盤を誰かに預けるとき、技術・法務・財務のどれを預けたかは、切れたときにはじめて見えます。
プレイヤーにはMod文化として返ってきます。ARMA IIIは公式のAPIを用意し、ある講演の時点で7万174本のModが作られていました。
自作に踏み出す人が繰り返し口にする鉄則が1つあります。
エンジンを作るのと同時にゲームを作れ。これが唯一の、破ってはならない規則だ。
Tyler Glaielはこう述べています。ゲームのないエンジンは、何物でもありません。
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