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電力網が違えば答えが変わる データセンターはPJMで移り韓国で待つ

3行まとめ

  • データセンターの急増で、電力設備の作りすぎと資本の座礁が起きうる
  • 米PJMでは仕事を地域間で移すと、2038年の総費用が19.43%下がる
  • 韓国では昼の太陽光の時間に負荷を寄せ、ガス1.2GWを回避できる

何が起きたか

ジョンズ・ホプキンス大学と韓国エネルギー工科大学の研究者が、データセンターを柔軟に動かす価値を試算しました。論文は arXiv に出た査読前のプレプリントで、結果はまだ第三者に検証されていません。

研究者は、データセンターの電力を firm・flexible・interruptible電力網からの引き込みをほぼ即座に減らせる負荷。計算を止めるか自前の発電に切り替えて実現します。用語集でこの語を見る の3階層に分けました。発電・蓄電・送電をまとめて計画するモデルに、その3階層を組み込みます。当てた系統は2つです。

1つは市場で取引する化石燃料中心の米PJM、もう1つは炭素上限のもとで国が一括計画する韓国です。論文は、PJMの総費用が2028年に6.34%、2038年に19.43%下がると報告しています。韓国の総費用の下がり幅は2038年で1.24%でした。

PJMの2028年では、ガス複合火力の新設が14.09GWから9.67GWへ減ります。差の4.4GWは、動かせない負荷が呼び込んでいた分です。

なぜ難しい・何がすごいか

計画側はこれまで、大口の負荷を動かせない固定需要として扱ってきました。想定した最大需要に合わせて設備を建てるので、データセンターが来なければ資本が座礁します。回収先はデータセンター以外の利用者の料金と接続費です。

価値の出方は系統の性格で割れました。PJMではゾーンごとに容量の価値と清浄電源の義務が違うため、仕事を移す先を変えるだけで地域の設備増強を避けられます。2038年の現実的な構成では、原子力の新設が8.97GWから0.07GWへ縮みました。

韓国を縛るのは負荷の伸びより炭素上限です。上限は2028年の189.9Mtから2038年の83.1Mtへ56%締まります。

上限がまだ緩い2028年には、太陽光の新設が7.70GWから8.20GWへ増えました。需要を昼へ寄せられるなら、運転費の安い太陽光を0.5GW足す価値が出ます。

2038年の韓国は上限が効き、太陽光は融通の有無にかかわらず40.93GWまで入ります。融通が置き換えるのは物理の調整力です。蓄電池は1.01GWから0.69GWへ、ガスは20.58GWから19.36GWへ下がりました。

たとえ話

洗濯機で言い換えます。電気の高い夕方を避けて安い夜に回すのが、時間の融通です。洗濯物を電気の安い実家まで運んでしまうのが、場所の融通です。

PJMで効いたのは運ぶほうでした。韓国で効いたのは回す時刻を選ぶほうです。2038年には昼の太陽光へ7.33TWhを寄せ、地域間の移動は0.68TWhでした。

洗濯そのものをやめる手も残っていて、それが出力抑制にあたります。

用語ミニ辞典

  • 容量拡張計画(CEM): 何年後にどの発電・蓄電・送電をどこに建てるかを決めるモデル。
  • firm: すぐ供給しないといけない負荷。待たせることも止めることもできません。
  • interruptible: 電力網からの引き込みをほぼ即座に減らせる負荷。計算を止めるか自前の発電に切り替えて実現します。
  • curtailment(出力抑制): 引き込みそのものを削ること。仕事を後回しにせず落とすので、需要が消えます。
  • ELCC: 系統が苦しい時間に確実に貢献する分だけを、その設備の容量として認める算定法。

技術者向けの深掘り

論文は3階層に別々の制約を与えます。flexible は24時間の繰り越しを持ち、同じ日のうちに埋め戻すか、条件の合う別拠点へ移します。interruptible は基本ケースで自分の年間電力量の5%までしか止められません。

1回の遮断は深さ・継続時間・変化の速さ・次までの間隔で縛られ、年間の遮断時間にも上限が付きます。年間上限を100%にして形の制約を外すと、interruptible はデータセンターの負荷を消したのと同じになります。PJMの2038年で総費用が49.70%下がるのは、そのためです。

PJMで埋め戻しの猶予を24時間から4時間へ縮めても、総費用の変化は0.02%未満でした。場所の移動が時間の移動を代わりに担います。2038年の現実的な構成では、Dominionから9.03TWhが出てComEdへ8.60TWhが入りました。

これは自分に関係ある?

  • 電気の請求書を見る人: 固定需要として計画したまま設備が余ると、費用はデータセンター以外の利用者の料金と接続費へ向かいます。
  • 計算基盤を運用するエンジニア: 学習やバッチを遅らせられるか、別拠点へ移せるかが電力側の価値を決めます。論文が現実的とみなす構成は firmすぐ供給しないといけない負荷。待たせることも止めることもできません。用語集でこの語を見る 30%・flexible 50%・interruptible 20% です。
  • AIの電力消費が気になる人: 同じ運用でも答えは系統で変わります。PJMでは場所、韓国では時刻が効きました。

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