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毎秒3,000トークンは手持ちのGPUで出る Kogの「30倍」がまだ約束な理由

3行まとめ

  • 企業がすでに持つデータセンター向けGPUで、1件の返答を速くする賭けです
  • デモは自作の20億パラメータモデル内部の調整済みの数値。20億は小型の部類に入りますのモデルで毎秒3,000トークン。大型モデルは9月が目標
  • 攻めのセキュリティ出身のCEOが率いる11人。1チップに数週間かかります

何が起きたか

フランスのスタートアップKogが、企業がすでに持っているGPUで推論学習済みのAIモデルを実際に使って答えを出す処理。学習と対になる工程ですを速くすると宣言しました。使ったのはAMDのMI300XとNvidiaのH200です。データセンターに並んでいる普通のGPUです。

5月に出した技術プレビューはHacker Newsのトップページに載りました。標準的なデータセンターGPUで1件のリクエストを極端に速くデコードできる、という主張です。手元のノートPCのGPUは対象外で、そこに落胆した人もいました。

反響は見物人だけではありませんでした。具体的な商談が200件あったとCEOのGaël Delalleau氏は言います。最初の用途はソフトウェア開発になると見ています。

ただし掲げる「30倍速い推論」は、まだ実証されていません。デモの毎秒3,000トークンは、20億パラメータの自作モデルで出した数字です。オープンソース化されたLaneformer 2Bです。

なぜ難しい・何がすごいか

難しいのは「1件だけ速くする」ことです。GPUは同じ計算を大量に並べたときに強くなります。だから推論サービスは、多くの依頼をまとめて処理し、合計の処理量を稼ぎます。

ところが利用者が体感するのは、自分の1件が返ってくる速さです。まとめ処理は全体の効率を上げますが、1件の待ち時間は縮めません。ここが分かれ目です。

1件ずつ生成するとき、GPUは計算力を余らせます。トークンを1つ出すたびに、モデルの重みをメモリから読み直すからです。待ち時間の正体は計算力ではなく、メモリの読み出し速度になります。

新しいGPUほどこのメモリ帯域GPUが1秒間にメモリと読み書きできるデータ量。生成の速さを縛る側の数字ですは増えており、使い切られずに残っている。Delalleau氏の見立てはそこにあります。

たとえ話

車を買い替えずにエンジンを開ける話に近いです。Cerebrasのような専用チップを買うのは、車体ごと新しくする手です。Kogがやっているのは、いま車庫にある車のエンジンを分解し、燃焼のタイミングを詰め直す作業です。

同じ車が速くなれば買い替え費用はゼロで済みます。代わりに、1台ずつ手で開けるしかありません。車種が変われば分解からやり直しです。

用語ミニ辞典

  • 推論: 学習済みのAIモデルを実際に使って答えを出す処理。学習と対になる工程です
  • シングルリクエスト・デコード: 1件の依頼に対して、答えのトークンを1つずつ生成する動作
  • メモリ帯域: GPUが1秒間にメモリと読み書きできるデータ量。生成の速さを縛る側の数字です
  • パラメータ: モデル内部の調整済みの数値。20億は小型の部類に入ります
  • CUDA: NvidiaのGPUを動かすための開発基盤

技術者向けの深掘り

Kogの手口はGPUの低い層まで降りることです。

Delalleau氏はÉcole Polytechniqueで固体物理を学びました。その後は攻めのセキュリティ、ホワイトハットハッキングの世界に進みます。DEFCONのCTFでは4回決勝に残っています。

非常に低い層、アセンブリ言語やバイナリコードまで降りてリバースエンジニアリングし、本来想定されていない目的に使えるか試す

同氏はこの姿勢をチームにも求めていると述べています。物理法則を理解するのと同じように、GPUの法則を理解して使い切るという発想です。

近い位置にいるのはスタンフォード大のHazy Researchだと同氏は見ています。同じフランスのZMLは、NvidiaのCUDANvidiaのGPUを動かすための開発基盤を迂回して複数のチップに対応する道を選びました。Kogはさらに下の層を狙っています。

代償は手作業です。新しいGPUが出るたびに数週間から数カ月かけて掘る、と同氏は言います。11人の体制では扱えるチップ数に上限ができます。

将来はこの手順をエージェント方式のパイプラインに載せ、対応するチップとモデルを増やす構想です。

これは自分に関係ある?

待ち時間に金を払っている人には近い話です。AnthropicはClaudeのFast Modeに価格の倍率を付けています。速さがすでに商品なら、それがソフトウェアだけで出たときに値段は動きます。

プロンプトからアプリやゲームを作らせるサービスでは、速さが売上に直結します。Kogは実際にその種の企業を設計パートナーに持っています。

一方で、手元のノートPCが速くなる話ではありません。対象はデータセンターのGPUです。顧客が小型モデルの追加学習を嫌ったため、Kogは大型モデル対応に舵を切りました。

9月に大型モデルで10倍を出せるか。そこが最初の関門です。

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