3行まとめ
- Chrome・Edge・Firefox・Safari のすべてが WebGPU画像処理のために作られた演算装置。同じ計算を大量に並列でこなすのが得意です。 に対応しました
- 3D描画よりも、GPUに計算させる用途のほうが影響は大きくなります
- ブラウザの中だけでAIモデルを動かす下地が整いました
何が起きたか
WebGPU が主要ブラウザで正式に使えるようになりました。パソコンやスマホに載っている GPU を、ウェブページから直接動かすための仕組みです。
標準化を進めたのは W3C の「GPU for the Web」ワーキンググループ。Apple・Google・Intel・Microsoft・Mozilla が参加しました。
対応の内訳はブラウザごとに違います。Chrome と Edge は113から Windows・macOS・ChromeOS で使えます。Android は Chrome 121 から。
Firefox は Windows が141から。macOS Tahoe 26 の ARM64 は145からです。
Safari は macOS Tahoe 26・iOS 26・iPadOS 26・visionOS 26 で動きます。
Linux 版の Firefox や Intel 製 Mac など、作業中のプラットフォームはまだ残っています。
なぜ難しい・何がすごいか
置き換わる相手は WebGLブラウザで3D描画を行う従来の仕組み。OpenGL ES 2.0 がもとになっています。 です。2011年ごろに登場し、ブラウザで3Dを描く道を開いた仕組みでした。中身は OpenGL ES 2.0 という規格を JavaScript に移したものです。
土台の OpenGL には今後の更新予定がありません。つまり WebGL には新しい機能が入ってきません。
もうひとつは用途の偏りです。WebGL は canvas に絵を描くために設計されており、GPU に計算だけさせる使い方を苦手としていました。画面に何も描かない処理、たとえば機械学習の推論が増えたことで、この偏りが効いてきます。
WebGPU が向き合う相手は Direct3D 12・Metal・Vulkan です。2014年以降に出てきたGPU規格に、そのまま対応するよう設計されています。仕様書はこう述べています。
WebGPU は WebGL とは関係がなく、OpenGL ES を明示的な対象にしていない
たとえ話
窓口の違いで考えると見通しが立ちます。
WebGL は「絵を1枚描いてください」という注文だけを受け付ける窓口でした。メニューが決まっていて、それ以外の相談は持ち込めません。
WebGPU は工場そのものへの入館証です。何を作らせるかを自分で決められます。絵を描かせてもいいし、計算だけさせて結果を持ち帰ってもかまいません。
用語ミニ辞典
- GPU: 画像処理のために作られた演算装置。同じ計算を大量に並列でこなすのが得意です。
- WebGL: ブラウザで3D描画を行う従来の仕組み。OpenGL ES 2.0 がもとになっています。
- GPGPU: GPU を描画以外の一般的な計算に使うこと。機械学習の推論などが当てはまります。
- シェーダー: GPU の中で走る処理の本体。頂点や画素ごとに並列で実行されます。
- WGSL: WebGPU 用のシェーダー言語。GPU 上で動くプログラムをテキストで書きます。
技術者向けの深掘り
入口は navigator.gpu です。ここから adapter と論理デバイスを順に取り出します。
if (!navigator.gpu) throw Error("WebGPU not supported.");
const adapter = await navigator.gpu.requestAdapter();
const device = await adapter.requestDevice();adapter は物理GPUとドライバに対応します。論理デバイスを挟む理由は分離です。1台のGPUは複数のウェブアプリが同時に使います。
パイプラインは2種類。render pipeline が canvas などへの描画を担当します。compute pipeline は汎用計算のためのものです。
compute shader は指定した workgroup の数だけ並列に走ります。
Render Bundles は描画コマンドの列を記録して再利用する仕組みで、CPU側の負荷を下げます。Babylon.js の Snapshot Rendering はこれを使い、シーンの描画を約10倍速くします。
実装は Chromium が Dawn、Firefox が wgpu。どちらも単独で持ち運べるライブラリです。
これは自分に関係ある?
- ウェブを見るだけの人: することはありません。重い3Dサイトやブラウザ上のAI機能が軽くなる形で効いてきます。ブラウザを新しく保つのが唯一の準備です。
- ウェブ開発者: 新規の3Dは WebGPU を前提に組める段階に入りました。ただし未対応の環境は残るので、
navigator.gpuの有無で分岐し、WebGL に戻す道を残しておくと安全です。 - AIをブラウザで動かしたい人: ONNX Runtime と Transformers.js がすでに WebGPU を使っています。サーバーに送らず手元で推論する構成が、現実的な選択肢になりました。
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