3行まとめ
- AIを禁止せず、学生に実行と吟味をさせるQiskitIBM が公開している量子回路のライブラリ。Python で回路を組み、シミュレータや実機で動かす用語集でこの語を見るの宿題を試した
- 3種類の課題を50セッションずつ、計150回すべてで自動採点を通った
- 種はパラメータだけを変え、足場が解法の要所を露出していた
何が起きたか
Qiskit の入門課題は、ChatGPT に渡すだけで提出できる形になりました。カナダの Wilfrid Laurier University の2人が arXiv に報告しています。査読は通っていません。
著者らの狙いは、AI を禁止せずに宿題を守ることでした。学生には自分用に生成された回路を動かし、結果を読んで書かせます。課題は3種類で、宿題1つを50セッションずつ、計150セッション試しました。
150セッションすべてで、最終成果物が動いて自動採点を通りました。著者らは9セッション分の記録を残しています。記録した9つのうち8つは図を描く pylatexenc が無くて実行が止まり、1回の追加指示で先へ進みました。
記録した9セッションでは、実験者がコードを直した回も、量子の論理を訂正した回もありません。
なぜ難しい・何がすごいか
著者らが守ろうとしたのは、答えそのものではなく手を動かす過程です。宿題は学生ごとに数値を変え、シミュレータで動かして JSON で提出させます。採点用の正解は教員側だけが持ちます。
量子の課題には、普通のプログラミング課題に無い引っかかりがあります。測定結果の並び順は古典レジスタの順で表示され、学生が並べた量子ビットの順と食い違います。HW1 はこの食い違いを狙った課題です。
論文が想定した相手は、最低限しか関わらない学生です。課題文を貼り、完成した解答を頼み、生成されたコードを動かします。エラーが出たら文面をそのまま返すだけで、中身に口を出しません。
追加の指示は2回までで、正解や採点結果は渡していません。抑止の層を9つ重ねても、観測された耐性はゼロでした。
用語ミニ辞典
- Qiskit: IBM が公開している量子回路のライブラリ。Python で回路を組み、シミュレータや実機で動かす
- 自動採点(autograding): 提出ファイルを機械が採点する仕組み。今回は隠した正解と提出内容を突き合わせた
- QFT(量子フーリエ変換): 量子版のフーリエ変換。逆変換をかけると元の状態に戻る
- Deutsch-Jozsa: 関数が定数か均衡かを判定する量子アルゴリズム。今回は種ごとに違うオラクルを組ませた
- プレプリント: 査読前に公開される論文。結果は第三者に検証されていない
技術者向けの深掘り
抑止のために重ねた層は9つでした。
- 決定的な個別化: 識別子から回路の設定を再現可能に生成する
- 回文でないビット列と測定マップの変更: 順序の取り違えを露出させる
- シミュレータ実行と機械可読な JSON: Aer の結果を決めた形式で提出させる
- 隠した参照と回路指標: 教員側が正解を再生成し、深さと演算数も見る
- 振り返りと実機実行(任意): 自分の結果に紐づけた説明とジョブの証拠
論文は、これらが効かなかった理由を4つ挙げています。種はパラメータを変えるだけで、課題の型を変えません。HW2 の QFT と逆QFT は掛けると恒等変換で、正しい出力は実行前に決まります。
学生向けノートブックには、QFT の実装と測定マップの計算が載っていました。隠した採点は出力の整合を確かめるだけで、誰が書いたかには触りません。
実機を使わせる案も、AI の関与を消しませんでした。予備的な試行では、QPE の期待ビット列が ibm_marrakesh で1024回中725回残りました。コードは ChatGPT が書き、実行は学生で、返ってきた数値の解釈も ChatGPT に渡せます。
著者らは、正しい成果物だけでは理解の証拠にならないと結論しました。監督付きの改変、口頭試問、予測、転移課題で理解を直接測る形を提案しています。
これは自分に関係ある?
- 教える人: 提出物が正しく動くことは、学生が自分で考えた証拠になりません。論文は口頭試問や監督付きの改変を挙げています
- Qiskit を学ぶ人: 測定結果の並び順や測定マップは、AI が代わりに片づけてしまう部分です。手で確かめる場面が自分の学びとして残ります
- 論文を追う人: 同じ課題インスタンスを50回ずつ繰り返した実験です。あらゆる種やあらゆる Qiskit 課題が解けることは示していません
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