3行まとめ
- パスキーパスワードを置き換える鍵。FIDO2/WebAuthn の認証情報を指す日常語ですはドメインに紐づく。別ドメインには出てこない
- 保管場所は別の話。デバイス固定と同期の2種類がある
- サイトがドメインを変えると、利用者は登録し直しになる
何が起きたか
パスキーの実体は、サイトごとに作られる鍵のペアです。作るときサイト側はブラウザに RP IDパスキーの紐づけ先を示すドメイン。Relying Party ID の略です という値を渡します。中身はドメインです。
鍵そのものは認証器鍵を作って保管する部品。端末に内蔵されたものと、セキュリティキーのような外付けがありますの中で生成されます。そこには、どのサイトのどのアカウント用かが記録されます。公開鍵の側だけがサイトのサーバーに保存されます。
だからログイン時に並ぶ候補は、いま開いているドメインのぶんだけです。同じサイトの別ページなら同じ鍵が出ます。隣のサービスに移ると、ひとつも出ません。
なぜそうなるか。アクセスできる範囲をブラウザと認証器の両方が見張っているからです。
認証器は端末に内蔵されていることもあります。セキュリティキーのような外付けのこともあります。どちらでも、ドメインで区切られる点は変わりません。
なぜ難しい・何がすごいか
混乱の正体は、2つの問いが混ざることです。「どこで使えるか」と「どこに置いてあるか」。答えを決めるものが違います。
前者を決めるのはドメインです。後者を決めるのは認証器の種類です。
紐づけ先と保管場所は独立している。ここが核心です。
この分離が安全性も生みます。鍵はドメインが一致しないと署名を出しません。偽のログイン画面に誘導されても、そこでは候補すら現れません。
パスワードとの差はここです。思い出して打ち込む方式だと、打ち込む先が本物かどうかは人間の判断に委ねられます。
鍵は判断しません。照合するだけです。
保管場所のほうは、2種類だけ覚えれば足ります。同期される種類は、提供元を通じて手元の端末に行き渡ります。デバイス固定の種類は、その認証器から外に出ません。
たとえ話
入館証で考えると早いです。発行元のビルなら、正面玄関でも通用口でも通れます。隣のビルでは、かざしても反応しません。
そのカードを財布に入れるか、スマホに登録するか。通れる範囲とは関係のない話です。パスキーが同期されるかどうかも、これと同じ立ち位置にあります。
ビルが移転すれば、カードは作り直しです。サイトのドメイン変更も、利用者からはそう見えます。
用語ミニ辞典
- パスキー: パスワードを置き換える鍵。FIDO2/WebAuthn の認証情報を指す日常語です
- RP ID: パスキーの紐づけ先を示すドメイン。Relying Party ID の略です
- 認証器: 鍵を作って保管する部品。端末に内蔵されたものと、セキュリティキーのような外付けがあります
- 同期パスキー: パスキー提供元を通じて複数の端末で使える種類です
- デバイス固定パスキー: 1つの認証器から出られない種類です。セキュリティキーの中の鍵が代表例です
技術者向けの深掘り
RP ID に指定できるのは、origin のドメインか登録可能なサフィックスです。origin が https://login.example.com:1337 の場合を考えます。RP ID は login.example.com でも example.com でも通ります。
後者にすれば example.com のサブドメイン全体で認証できます。
分離は堅牢です。あるRP向けのパスキーは、別のRPからはプロパティも存在すらも検出できません。この境界はブラウザと認証器が協調して守ります。
別ドメインで使い回したいときは Related Origin Requests があります。RP ID のドメインに /.well-known/webauthn を置きます。許可する origin を origins の配列で返す仕組みです。
ただしフェデレーションが使えないときの手段として設計されています。まず OpenID Connect のような標準の検討が勧められています。
これは自分に関係ある?
- 使う人: 端末を買い替えても、同期パスキーパスキー提供元を通じて複数の端末で使える種類ですなら引き継げます。セキュリティキーの中の鍵は動きません
- サイトを作る人: RP ID をどう決めるかが分かれ道です。サブドメインが増える見込みなら親ドメインを検討します。ドメインを移すなら、登録し直しの案内を先に用意します
- どれでもない人: 覚えることは1つです。ログイン画面にパスキーが出てこないときは、まずドメインを疑います
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