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実行ファイルがSQLiteデータベースになる ELFをテーブルに移してそのまま起動する

3行まとめ

  • Farid Zakaria氏がSQLiteファイルを直接実行する形式SELFLinuxの実行ファイルと共有ライブラリの標準形式。Executable and Linkable Formatの略。用語集でこの語を見るを試作した
  • ELFの各部品をSQLiteのテーブルに入れ、専用インタプリタが取り出して実行する
  • binfmt_miscLinuxカーネルの仕組み。ファイルの中のパターンとインタプリタを登録すると、任意の形式をネイティブの実行ファイルのように起動できる。用語集でこの語を見るでカーネルに登録すると、SQLiteファイルがそのまま起動する

何が起きたか

Farid Zakaria氏が2026年8月23日、SQLiteファイルをそのまま実行する試作をブログで公開しました。名前はSELF(Structured Executable & Linkable Format)です。fileコマンドはこのファイルを「SQLite 3.x database」と判定します。

それでも実行権限を付けて ./hello と打つと、「Hello, world!」が動きます。同じファイルをsqlite3コマンドで開けば、依存ライブラリの一覧をSQLで引けます。翌24日にはSimon Willison氏が自身のブログで紹介しました。

なぜ難しい・何がすごいか

Zakaria氏の出発点は「ELFはすでにデータベースなのに、それを認めていない」という観察です。ELFは文字列表・シンボル検索の索引・セクションの一覧表を、手作りの仕掛けで別々に抱えています。SQLiteに移すと、この3つは文字列の列・インデックス・テーブル一覧に置き換わります。

読む側の事情も同じです。カーネル・ld.so動的リンカ。プログラムの起動時に共有ライブラリを探して結び付ける。用語集でこの語を見る・readelfは、同じELFパーサをそれぞれ再実装してきました。SELFでは、ELFを読む操作がSQLのSELECT文になります。

書き換える操作も同じです。デバッグ情報を削るstripはDELETEとVACUUM、動的リンクの設定を直すpatchelfはUPDATEです。

ファイルの途中を切り貼りする壊れやすいオフセット操作が、トランザクションに守られたSQLに変わります。ここが提案の核です。

用語ミニ辞典

  • ELF: Linuxの実行ファイルと共有ライブラリの標準形式。Executable and Linkable Formatの略。
  • application ID: SQLiteファイルの68バイト目に用意された4バイトの識別欄。SELFはここに「SELF」と刻み、普通のデータベースと区別する。
  • binfmt_misc: Linuxカーネルの仕組み。ファイルの中のパターンとインタプリタを登録すると、任意の形式をネイティブの実行ファイルのように起動できる。
  • ld.so: 動的リンカ。プログラムの起動時に共有ライブラリを探して結び付ける。
  • クロージャ: プログラムと、それが依存するライブラリ全部を1つにまとめた集合。

技術者向けの深掘り

実行に最低限必要なテーブルは2つです。ELFヘッダをキーと値で持つself_metaと、セグメントのバイト列をBLOBで持つsegmentsです。segmentsにはプログラムヘッダ1つにつき1行が入ります。

シンボル表は1テーブルと1本のB-treeインデックスに収まり、.gnu.hashの手製ブルームフィルタを置き換えます。インタプリタのself-execは、libsqlite3にリンクした小さなC言語プログラムです。ld.soに近い手順でセグメントをマップし、再配置し、エントリポイントへ跳びます。

動的リンクは2方式を試しています。glibcのrtld-auditで検索だけをSQLに置き換える方式と、SQLで書き直したリンカself-ldです。

Zakaria氏はコストも測っています。単体のhelloでは、SELFのサイズはELFの約2倍です。

一方、手元の実行ファイル723本と共有ライブラリ400本を1つのデータベースに詰めると611.9MiBでした。元のELF群の合計644.4MiBより小さくなります。重複するライブラリの共有が、スキーマの構造から自然に生まれるためです。

起動にはSQLiteを開く固定の約5ミリ秒がかかります。またバイト列をB-treeから複製するため、同じバイナリを動かしてもプロセス間でテキストページを共有できません。

これは自分に関係ある?

  • AIやテックの話題を追っている人: 明日のLinuxが変わる話ではありません。実行ファイルという何十年も動いてきた土台も、視点を変えれば作り直せると示した実験です。
  • Linuxを触るエンジニア: コードはGitHubのfzakaria/selfdbにあります。ELFとSELFはロスレスに相互変換でき、helloがSQLiteデータベースとして動くNixOSのVMも付属します。
  • 運用やパッケージングに関わる人: LD_PRELOADの差し替えがテーブルの1行になり、システム全体への適用と巻き戻しが1つのトランザクションで済む応用も示されています。

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この記事に出てきた用語は用語集にも入れています。他の記事で噛み砕いた語もまとめて引けます。

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